30代を前向きに生きよう!

エリクソンの発達理論における30代(成人期)という時期

エリクソン 成人期

発達心理学の世界では、人の発達に関する研究が積み重ねられてきました。

発達心理学における代表的な人物の一人が、心理学者のエリクソン,E.H.です。

エリクソンは、「人は生涯を通して発達する存在である」という生涯発達の視点に立ち、人が生まれてから死ぬまでの発達段階や各段階の課題を設定した心理社会的発達理論を提唱しました。

エリクソンの発達理論では30代は成人期とされ、乗り越えるべき課題として「親密性vs孤立」が挙げられています。

では、成人期とはどのような時期で、親密性や孤立とはどのような意味なのでしょうか。

この記事では、エリクソンの発達理論における30代という時期について解説します。

エリクソンの心理社会的発達理論とは

エリクソンの心理社会的発達理論とは、エリクソンが、生涯発達という視点に立ち、フロイト,S.が提唱した心理性的発達理論を拡張してまとめた発達理論です。

心理性的発達理論では、出生から思春期までの発達を対象として、自我発達の性的・生物学的な側面が重視されていました。

しかしエリクソンは、人の出生から死亡までの過程を発達と捉え、発達は社会との相互作用によって進むという考えを示しています。

エリクソンの心理社会的発達理論のキーワード

エリクソンの心理社会的発達理論におけるキーワードはたくさんありますが、主なものとして生涯発達、生物学的漸成説、発達段階、発達課題、同一化、同一性を挙げておきます。

キーワード 説明
生涯発達 人の経験や知能など精神の発達は、生まれてから死ぬまで続く(生涯に渡って発達する)とする視点
生物学的漸成説 人の精神の発達には身体の成長と同じく順序性がある(年齢に応じた発達段階があり、ある段階を土台にして次の段階が準備される)という考え方
発達段階 人生の各場面における発達の節目

エリクソンは、乳児期、幼児期前期、幼児期後期、学童期、青年期、成人期、壮年期、老年期の8段階を設定

発達課題 各発達段階にある人が直面する課題(詳細は後述)
同一化 自分の中にあるポジティブな側面とネガティブな側面を心の糧にして乗り越え、統合すること
同一性 「自分とは何か」、「自分の社会における位置づけ」、「思想的信念や価値観」を獲得すること

エリクソンの発達段階

エリクソンは、人の発達段階を8つに分け、各段階における発達課題を「vs」という対立形式で示しています。

時期 年齢 心理的課題 獲得
乳児期 出生~2歳 基本的信頼vs不信 希望
幼児期前期 2~4歳 自律性vs恥と疑惑 意思
幼児期後期 4~6歳 自主性vs罪悪感 目的
学童期 6~12歳 勤勉性vs劣等感 有能感
青年期 12~22歳 同一性vs同一性拡散 忠誠性
成人期 22~40歳 親密性vs孤立
壮年期 40~64歳 世代性vs停滞性 世話
老年期 65歳以降 自己統合vs絶望 英知

出典:エリクソンの発達段階と発達課題とは?ライフサイクル理論を分かりやすく解説|psycho-lo

エリクソンは、各発達段階ではポジティブな力(成長志向の力)とネガティブな力(退行志向の力)が拮抗していると考えました。

そして、ポジティブな力がネガティブな力を上回って発達課題(心理的課題)が克服されることで、社会に適応した発達を遂げ、社会の一員としてより良く生きる力が得られるとしています。

なお、各発達段階の年齢は、エリクソンが理論を提唱した時代に合わせたものであり、現在は、上記の表よりも青年期が長くなる傾向にあります。

エリクソンの発達理論における成人期という時期

30代は、エリクソンの発達段階では成人期に分類されます。

エリクソンは22歳頃から40歳頃までを成人期と位置づけ、親密性vs孤立という心理的課題(発達課題)を設定しています。

成人期は、多くの人が職業を選択して社会人として独り立ちし、プライベートでは恋愛と結婚、妊娠と出産、子育てを経験する、いわば「人生の本番」に突入する時期です。

成人期には、それ以前と比べて多様で親密な人間関係を築くことで自分の価値や役割を見出し、自分が所属する社会にも価値を見出します。

発達課題の「親密性」とは、相手の望むことや興味関心を感じ取れるようになり、自分を放棄(犠牲)にしてでも相手を助けたいと思える関係性です。

異性との関係においてだけ形成されるのではなく、同性との友情や仕事上の信頼関係においても構築されることがあります。

例えば、仕事においては、上司・先輩・同僚・後輩などと互いに「自分を放棄(犠牲)してでも相手を助けたい」というレベルの親密性を築くことができれば、仕事の生産性が劇的に高まります。

しかし、最も重要なのはやはり異性との関係であり、交際相手との間で親密性が築かれることで、結婚という選択ができるようになります。

親密性とvsで結ばれた「孤立」とは、物理的に他人がそばにいないことではなく、親密性を築いた他人がいないということです。

つまり、広く浅い人間関係を構築し、表面的には充実した社会生活を送っているように見えても、親密性が獲得されたとは言えないのです。

一時的に人間関係がうまくいかず孤立に陥ったとしても、それは自然なことです。

孤立の中で悩み苦しむ経験をすることで他人の悩みや苦しみを知り、結果的に他人と親密性を築きやすくなることもあります。

アイデンティティの確立と親密性

自己放棄(犠牲)ができるようになるには、青年期において、放棄しても自分を失わないだけのアイデンティティが確立している必要があるとされています。

アイデンティティが確立されないままでは、自己放棄できるレベルの親密な人間関係を築くことができず、孤立して孤独感に苛まれることになり、アイデンティティが揺らぐ事態へと発展するとされています。

「自分はこういう人間である」という確固たる自覚やそれに基づく他人への信頼感がないと、自分を放棄してでも他人を助けようと思う気持ちになれないのです。

30代の悩みを乗り切るために

30代男性の悩み」に書いているとおり、30代には、仕事のこと、お金のこと、体のこと、結婚のことなど様々な悩みを抱えることになりますが、いずれも人間関係の中で生じる悩みです。

「体の悩みと人間関係は関係ないだろう」と思うかもしれませんが、体力の低下、体型、髪の毛、ニオイなどの体の悩みは、他人が周りにいるからこそ生じます。

エリクソンの発達理論では、30代を含む成人期をポジティブに乗り越えるには、他人と親密性を築くことが重要とされています。

例えば、仕事やお金の悩みは信頼できる上司や同僚、結婚や身体の悩みは腹を割って話せる友人がいれば、ポジティブな解決策を見出しやすくなるでしょう。

エリクソンの発達理論は、他人と親密性を構築してサポートを求めることが、30代の頃に抱える様々な悩みを解消・緩和する近道になりえることを示唆しています。

アイデンティティが確立されていない場合

エリクソンの発達理論では、青年期の発達課題であるアイデンティティが確立されていない場合、親密性の獲得は困難とされています。

アイデンティティとは、ごく簡単に言えば、「自分とはどのような存在か」、「社会における自分の役割は何か」を自覚することです。

アイデンティティが拡散した状態にある場合、まずはアイデンティティの確立を目指さなければなりません。

「30代で自分探しかよ。」と思うかもしれません。

しかし日本では、個人がアイデンディティの選択や確立をする前に進路を決めるように求められる傾向にあります。

つまり、一般教養を自由かつ幅広く学ぶ中で、悩みながら自分らしさや自分が進むべき道を見出していく期間が十分に与えられておらず、アイデンティティを確立できないまま社会人になる人が多いのです。

一昔前は、進路を決めたのなら迷いがあっても突き進めという風潮がありましたが、近年はそうした風潮がやや薄れ、30代40代で転職する人や離婚して人生をやり直す人が増えています。

もちろん、転職や離婚を安易に勧めるわけではありません(特に家族がいる場合)。

しかし、30代だからといって自分の生き方に疑問を持ったり、自分探しをしたりすることを諦める必要はないことは理解しておくべきです。

まとめ

エリクソンの発達理論は何十年も前に発表されたものですが、今も発達心理学における代表的な理論の一つであり、その知見は各分野で活かされています。

30代の悩みと向き合うときにも、参考になることが多いはずです。

生涯発達という考え方に基づくと、30代は独立した時期ではなく、出生から死亡まで続く人生という道の途中です。

30代の悩みや生きづらさを解消・緩和する鍵は、10~20代の頃に落ちており、30代を生きるモチベーションは、40~50代を見据えることで湧いてきます。

大きな悩みにぶち当たるとつい目の前ばかり見てしまいがちですが、冷静になって人生という大きな視点で自分を見る機会を持つと、突破口が見つかることがあります。

【参考】

  • エリクソンの発達段階と発達課題とは?ライフサイクル理論を分かりやすく解説

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